2020/05/30

新型コロナウイルスの第2波(第3波)について思うこと(2020/5/30)


photo by NIAID


2020年5月30日の情報に基づき記事を作成しています。
内容については、最新の情報をご確認上ご判断ください。

これまでの新型コロナウイルスの対策について思うこと


本稿では、新型コロナウイルスの第二波、第三波の定義が曖昧で今後混乱しそうなので考察します。
2020年5月30日現在、非常事態宣言が解除されています。自粛と3蜜(密閉・密集・密接)の回避で下記のように感染者数は減りました。

Coronavirus Disease (COVID-19) Japan Tracker
(2020/5/30)

ウイルスそのものが感染しやすいのか、飛沫に含まれるウイルス数が少なくても感染するのか、無症状下での感染することが感染力を強く見せているのかなど、感染力が何に起因しているのか、理由がはっきりしなかったのですが、実際感染者が減っているので、対策は有効だったと思います。

新型コロナウイルスの治療について思うこと


2020年5月30日時点で公式に認められた治療薬としては、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)しかありません。(薬物治療に関しては別途投稿する予定です。)しかし、医療機関で症例報告として挙げられているものもかなりの数がありますので、下記をご参照ください。


標準的な治療体系、ワクチンによる予防などには至っていないことが課題として感じています。日本(世界でも)の治療の現状は、例えるなら、ブレーキの効きの緩い車を運転しているようだとも言えます。治療体系が確立していれば、車を止めることができますが、今は(いろいろな)ブレーキ(になりそうなもの、効くものもあるかもしれません)を踏みつつも、自然に車が止まるのを待っているような状況だと言えます。

確かに、自粛により発症者数としてカウントされる人数が減りました。しかし、重症化せずに感染を広げていくタイプの感染が、密かに進行している可能性があります。発症した感染患者を早期に見つけ、隔離・治療できれば、感染症の広がりを抑えることが出来ます。おそらくこれが現状の戦略なのだと思います。突発的にいくつかのいわゆるクラスターが発生と押さえ込みを「再燃・寛解」のような概念で捉えていくことが必要になるのだと思います。

RNAウイルスとしての新型コロナウイルス


コロナウイルスの性質を振り返ってみると、ウイルスは自分の力で増殖出来ず、人に感染し、その細胞を用いて、コロナウイルスのコピーを作り増殖します。コロナウイルスの遺伝子はRNA(人の場合はDNA)であり、RNAはDNAに比べて物質として不安定なので、RNAは誤ったコピーが出来やすくなります。コロナウイルスが少し異なった形でコピーされることを変異といいます。

厳密には違うところがある(※)のですが、同じRNAウイルスと言うことで、インフルエンザウイルスを例にとると、インフルエンザはこの変異が常に起こっていて、マイナーチェンジをくりかえしながら生き延びています。一度、インフルエンザにかかったにも関わらず、同じ人が何度もかかるのは変異したインフルエンザに感染しているからです。

1918年に始まった通称「スペイン風邪」において、下記のサイトに日本での状況が、詳しく分析されています。2018年と1920年に2回のピークがあり、このサイトでも「原因ウイルスが変異し、その結果として死亡率が大幅に増加したものと考えることができる」と考察しています。


※:コロナウイルス:プラス鎖(mRNAとして直接ウイルスになるタンパク質を作る)
 インフルエンザウイルス:マイナス鎖(ウイルス粒子にRNAポリメラーゼを持ちゲノムRNAからmRNAを作る)

新型コロナウイルスの第二波、第三波の定義について


今後、新型コロナウイルスの発生状況を見る際にも、ひそやかに進行していた感染が発症者として現れただけ(再燃)なのか、変異により新型コロナウイルスが新たな形になったのか注意して見ていくことが大事だと言えます。変異という言葉が一人歩きするのも困りますが、その一方で、人数が増えたことを持って、第二波、第三波だと述べるのは状況を見誤ることにつながると思います。

いわゆるスペイン風もそうですが、現在では遺伝子変異を直接的に検査しています。2020年4月27日の国立感染症研究所の発表に、新型コロナウイルスのゲノム分子を疫学調査した結果が掲載されています。これによると、コロナウイルスの変異からは、下記のことが記載されています。
  • 2019年末の中国・武漢を発端とする新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) は 2020 年1月から2月にかけて国内に侵入し、地域的な感染クラスター(集団)を発生(第1波)
  • その後、渡航自粛が始まる3月中旬までに海外 からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ 伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測
  • 2020 年 3 月末から4月中旬における日本の状況は、初期の中国経由(第1波)の封じ込めに成功した一方、欧 米経由(第2波)の輸入症例が国内に拡散したものと強く示唆

また、「第3、第 4 の波が来ることは必然」ともあり、今後とも警戒が必要なことが伺えます。世間的に次は「第二波」なのだと思いますが、遺伝子変異としては「第三波」ということになります。