2018/09/04

ディープラーニング技術による胃生検材料の病理診断支援(オリンパス)


オリンパスは民生用のカメラでお馴染みですが、実は医療機器分野にも相当注力している会社です。今回医療分野でニュースリリースが発表されておりましたので紹介いたします。

このリリースは胃がん診断にAIを使ったものになります。画像処理分野での分類問題に相当します。病理診断での見落としをなくす仕組みを作成していいこうという試みだと思います。感度と特異度は同時に成り立たないので見落とすよりは間違いがあっても、可能性のありそうな画像を片っ端から拾った方が良いという、一方に寄せたAI学習を実施しています。
実際の病理の診断では、主として、少しでも腺がんとあやしい検体を非腺がんへの期待を込めて再度見直すという業務フローを想定しているのだと思います。

ROC曲線については別途記載する予定です。



2015年から2018年の間に呉医療センター・中国がんセンターで診断された胃生検標本を用いて、病理画像による診断支援のためのディープラーニング技術を開発しました。


  • オリンパスが病理画像の解析用途に適したディープラーニング技術を独自に開発した。
  • 呉医療センター・中国がんセンターが所有する、胃生検の病理ホールスライド画像368件から、正確かつ詳細な診断情報を持つディープラーニングの学習データを作成した。それらのデータを用いて、胃生検における腺がんの検出を支援するAI病理診断支援ソフトウェアの技術を完成させた。
  • 【テスト1】で、786件(腺がん297件、非腺がん489件)の症例を検討し、腺がんはすべて陽性(感度100%)と判定するようにソフトウェアの基準値を設定した。この基準値設定では、非腺がん489件中225件が陰性と判定された。
  • 【テスト2】では、テスト1で設定した基準値において、新たに140件(腺がん67件、非腺がん73件)の症例を検討した。その結果、腺がん67件はすべて陽性と判定され、非腺がん73件中37件が陰性と判定された。【感度100%(67件/67件)、特異度50.7%(37件/73件)】
  • 偽陰性率が低いAI病理診断支援ソフトウェアは、陽性症例の見落とし防止や、陰性症例のスクリーニング効果により、実臨床における病理医負担の軽減が期待される。


オリンパス株式会社  は、独自開発したディープラーニング技術を用いて、独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンターの臨床研究部病理診断科と、「胃生検材料を用いたAI病理診断支援ソフトウェア」の共同研究を行いました。

368件の病理ホールスライド画像をもとに学習させ、感度100%、特異度50%の精度のAI病理診断支援ソフトウェアの実現を目指し、それに近い精度をもつ結果が得られました。

感度:陽性を陽性と診断する割合
特異度:陰性を陰性と診断する割合


(ニュースソース)
プレスリリース(オリンパス)

(関連リンク)
独立行政法人国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター