3.11震災で気づかされた物流の重要性
薬局などを含む医療機関への欠品リストの伝達は卸さんやFAX経由だったと思います。毎日増えていくリストと払い出し予定と在庫の突き合わせ作業が必要になります。被害状況の連絡は、現場には数日経ってから送られてきます。被害状況が欠品リストの形で時差ではっきりしてくると被害が広がっていくようにも見えます。
医薬品と経済
余剰在庫は資産として扱われるため在庫削減は税金面で経営の焦点になります。在庫の適正量には通常の欠品対策のほかに、震災など緊急時の在庫も必要になります。震災時に薬局を含む医療機関は医薬品の備蓄庫として役立ちます。(薬局が分散してあった方がいい理由はこういうこともあるのでしょうか。)震災時も含めた安定供給を自治体・行政と病院・薬局がどのようにバランスを取っていくのか、とても重要なことだと思います。
そのほか、共通体験として震災後しばらく経ってからもメーカーの方々とも当時の話をお聞きすることがあります。個人的な経験と会社での対応など、人命がかかることなのでその方の生命観や職業観が如実に出てきます。震災時の物流戦略にいわゆる会社のカラーを垣間見ることができました。
2018年も後半になる最近も大きな地震や台風が度々発生していて避けられない被害は出るものの、その後の対応に関しては、行政からメーカー・卸、医療機関まで少しずつ洗練されたものになっているように思います。
業界の取り組み
業界でも物流システムの統一に対する試みがあります。日本ロジスティクスシステム協会で医薬品4社の取り組みが表彰されています。物流拠点の分散・共同化だけでなく、物流上の度量衡も合わせたというのがポイントに思えます。
2018年度ロジスティクス大賞 受賞4事例決定!(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)
【ロジスティクス大賞】
会社名:
アステラス製薬株式会社/武田薬品工業株式会社/武田テバファーマ株式会社/武田テバ薬品株式会社
テーマ:
北海道共同物流センター開設による医療用医薬品安定供給体制の拡充
<GDP基準統一による手順・管理の標準化、及び共同化に伴う物流効率化の推進>
受賞事由:
東日本大震災等の大規模災害時において、物流機能の麻痺・混乱による医薬品の供給不足は人命に関わる大きな問題となる。そこで、業界を代表する企業が連携して、医薬品業界としての事業継続の観点から物流拠点の分散化を図るために、共同物流センターの開設を行ったのが本取り組みである。従来のコスト削減の観点から物流拠点を集約していた流れと逆行する取り組みで、これを成功させるためにはコスト上昇を押さえるための標準化が必要不可欠となっていた。そのため、医薬品の適正流通基準(GDP:Good Distribution Practices)の発出を踏まえて、保管、荷役、輸送といった物流機能の標準化を図り、さらには温度管理等の品質管理基準についても統一を図っている。これにより、労働力不足の解消やCO2排出量の削減、さらには生産性の向上にも寄与する取り組みとなっており、「医薬品の安定供給」という社会的責任を果たすためにも今後の普及が期待される優れた取り組みとして高く評価された。
ロジスティクス大賞とは(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)
(2018年9月20日追記)
震災に関しての心構え(薬剤師向け)
震災に関して本田あきこ先生のメールマガジンを頂きました。メール転送可能であることと、震災時に必要な心構えについて載っていましたので掲載いたします。
様々な災害が発生していても1つとして同じものがないこと。災害現場のスタッフ間の信頼関係で大事であり、震災時に特に信頼関係構築に時間がかかる理由として、スタッフ同士がそもそも初対面であるとご自身の経験から述べられています。いつ災害派遣を受け入れる立場になるか分からないことも考えれば、薬剤師は患者を含めた地域と常に顔の見える関係でいることが重要と思いました。
(以下、引用)
今回のテーマ:災害時の信頼関係
今月に入り、台風21号の被害の爪痕が残る中、9月6日北海道胆振東部地震が発生しました。
私はこの日、十勝市内に宿泊をしておりました。
深夜3時8分の地震発災後、ホテルの館内は停電となりました。
ベッドの足元の非常灯をつけ、スマホでラジオを聞きながら朝を待ちました。
夜が明け、北海道薬剤師連盟の役員の皆様と相談し、日常の北海道キャラバンを継続する状況にないと判断、とかち帯広空港から空路羽田へと向かい、災害対策本部がある日本薬剤師会に到着しました。
(私は9月11日、災害対策委員会の委員を拝命しました。)
全国各地でさまざまな災害が発生していますが、どれ1つ同じものがありません。
薬剤師の派遣活動を振り返ってみますと、23年前、阪神淡路大震災で震度7の震災発生後、初めて、薬剤師の災害派遣が行われました。
その後、様々な災害に現地の薬剤師会が中心となり、平時と切れ目のない医療提供の活動実績があります。
私は平成28年に発災した熊本地震後に、熊本県薬剤師会職員として関わらせて頂いた時に、薬剤師という職能を発揮することが地域住民の方の力になれたことを経験談として、伝えさせて頂いております。
その際、医療の連携のためには信頼関係作りの大切さも伝えています。
実務実習で研修をされている薬学生の方や若い薬剤師の方から、
「災害支援活動に関わりたいけれどもどうすれば活動できるのですか?」
と質問を頂くこともあります。
私は、
「支援活動にはボランティア活動等もありますが、薬剤師会の会員として、災害派遣薬剤師として活動することも1つの選択肢」
と伝えております。
かかりつけ薬局・薬剤師に期待されていることの1つの役割に地域貢献がありますが、非常時であっても、薬の安定供給、適正使用に貢献することは、信頼関係を築く1つの要素になると私は感じます。
しかしながら、信頼関係を築くことは毎回、どの災害でも時間がかかるお話を伺います。
その原因は、様々な医療チームとその時、皆さんが初めてその場所で会われるからです。
災害時の医療チームとして、
DMAT(災害派遣医療チーム)
JMAT(日本医師会災害医療チーム)
DHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)*熊本地震後に創設されたもの
DPAT(災害派遣精神医療チーム)
等があります。
大規模災害時はこうしたチームと現場で連携をとりながら活動することが必須ですので、一つのチームとして連携可能な災害医療体制として法制化を行っておくことが大切ではないかと私は考えます。
制度化することで、必要な災害チーム医療人材の確保、訓練期間等、具体的な連携の取り組みが平時から行えるのではと思います。
私の信条の1つでありますが、私は災害に強く島嶼に対する医療対策にしっかり努力をしていきたいと思います。
日本薬剤師連盟 副会長/薬剤師
本田あきこ
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日本薬剤師連盟副会長 本田あきこ
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