2018/12/21

外国人労働者受け入れの現状と薬局の今後

人手不足は建築と介護に集中している


2018年、人手不足と言われて外国人人材に頼るというニュースまで出ているが、どこに人手不足が発生しているのか。東日本大震災の復興や2020年の東京オリンピックの建築関連に人手が不足していると言われている。

人手不足の状況を確認するためにハローワーク(公共職業安定所)の統計を厚生労働省でまとめたデータがある。業種別有効求人倍率の小分類をグラフにしてみると、「建築躯体工事の職業」で10倍以上、建築・建設に関して3〜5倍の項目が上位を占めている。医師や薬剤師等と介護サービスでも有効求人倍率が高くなっているのは、高齢化社会が背景になっているのではないか。

データで見てみると人手不足の領域が偏っているように思える。
しかも、建築物は1回建ててしまえば、メンテナンスが必要になるだけだ。また高齢化だけでなく少子化も同時に進んでいるので介護に必要な人たちもある時を境に減っていくと予想される。人手不足は必要ではあっても一時的な可能性がある。


https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000337389.pdfより作成

有効求人倍率=有効求職者数に対する有効求人数の比率
ただし、有効求人倍率は公共職業安定所を通じた求人・求職に限られ、新規学卒者は除かれている。


市場と貨幣滞り


景気回復の実感が得られない理由は、お金の価値が目減りしているからではないか。金融緩和されると、お金の総量が増加する。生きて入れば必ず必要になる食事などで購入するものがある。これらの総量が変わらないとするとお金の量が変わらないので価格は上昇することになる。

最低賃金など下限の保障はあるとしても、資本主義では給与として支払う額を規制する手段がないため、企業から労働者に支払われる賃金は低く抑えられる。設備への投資はあるにせよ、企業に蓄えられた財は資本家の手に渡ることにより、貧富の差が生まれる。

資本家の多くが求めるのは、ダウンサイジング(Down + Size + ing)やリストラクチャリング(re + structure + ing)による資本の効率化。人件費も派遣などにすると作業にかかる経費として処理される。人件費も目標管理制度の名目で総額を分配する仕組みへと移行する。

貨幣価値の目減りと労働力のダウンサイジングにより労働者に支払うお金が減っていく。結果としてより安く働く労働力へと企業の目が向く。

倫理観が欠如すれば企業・労働者とも不正や制度の悪用へと目が向くこととなる。

専門職種や日本語に堪能ではない場合、単純な労働力の提供を名目として外国人労働者が安く使われるということもあるかもしれない。


薬局での外国人対応


薬局というか薬剤師の特徴は、社会的に一定の集団として、全国一律の対応ができる点にあるように思う。基準薬局制度の中では薬局で外国語対応ができるかについての項目があった。多言語対応など業務の複雑化する中で、制度の管理者という側面から外国人に対する薬局の対応に注目して行きたい。




(以下、引用)
テーマ:外国人労働者の増加と薬局の窓口業務


12月上旬、福井県薬剤師連盟の支部訪問をしている中で、以下のようなお話を伺いました。

「福井県は製造業と繊維工業が盛んで、ブラジル人、中国人、ベトナム人などの外国人労働者がこのところ増えてきている。
そうした外国人労働者の方も薬局に来られる。
たいていは通訳の方が同伴し、本人の保険証を出してくれたり、問診票の記入にも協力して下さる。
しかしながら、言葉のやり取りが難しいケースが少なくなく、時にはスマホの翻訳アプリを使って会話をすることもある。
こうした例が増えるにつれ、薬局の窓口業務が煩雑になってきている。」

このような状況は福井県に限らず、全国的な傾向であり、懸念でもあると思います。

また他方では、外国人による健康保険制度の悪用が問題視されつつあり、そのチェック強化も課題となっています。
参考:国民健康保険ガイド「外国人が国民健康保険を悪用して高額医療を受けている!?」
http://www.kokuho.info/401
参考:NHK「医療保険制度 “日本で安く治療” 実態は…」
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2018/03/0330.html

相互扶助という国民皆保険制度の精神も、医療費抑制の努力も、すべてが揺らぎかねない事態が実際に進行しています。

12月8日に出入国管理及び難民認定法(入国管理法)の改正案が国会で可決され、将来、外国人労働者が更に増加するかもしれません。

窓口業務が一層煩雑になり、しかも不正チェックも考慮しなければならず、薬局窓口には大変な負担がのしかかることになります。
また、薬局のみならず、医療機関、行政機関等、窓口として業務を行う場所は多岐にわたります。

外国人労働者の健康を守る、しかし不正は絶対に許さない。
そして薬局の窓口業務に支障が出ないようにしなければなりません。
「薬のことなら、まず薬剤師に聞いてみよう!」と言うためには、国民の求めに支障なく対応できる環境の整備が必要です。

そして環境整備のためには、人材の確保とその養成教育に対する十分な予算措置が必要です。
そのような施策を早急に検討すべき時に来ていると私は感じています。
現場を歩くことで日本が直面している課題を身近に知ることができます。

そうした意見を吸い上げ、政策として何が必要か、これからも歩き続けて参ります。
そして必ず実現できるように頑張ります。

日本薬剤師連盟 副会長/薬剤師
本田あきこ

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