2020/08/10

新型コロナウイルスの新規感染者数増加について(2020年8月10日)

Tags

photo by NIAID

2020年8月10日の情報に基づき記事を作成しています。
内容については精査しておりますが、最新の情報をご確認上ご判断ください。

東京都を中⼼として再び新規感染者数が増加


4月15日以降新型コロナウイルスの感染は一旦収束傾向を見せて、緊急事態宣言の解除及び段階的に様々な活動を再開してきました。しかし、6月から7月にかけて東京都を中心に再び新規感染者数が増加し、単純な検査陽性者数では緊急事態宣言下における時期を上回る報告が認められています。

厚生労働省の8月10日時点の陽性者数のグラフを見ても、数字が増えています。


陽性者数の最初の山が4月10日(708名)にあるので、グラフの山を平行移動させると下図のように大体、7月16日頃に重なります。正確には数学的な近似が必要かも知れませんが、陽性者数の増加具合を見ると、急激な上昇や緩やかになるというよりも綺麗に繋いだようなグラフになっています。移動した2月15日あたりが緊急事態宣言解除の時点になっています。

単純に陽性者数だけで感染状況を測れないという主張もあるようで、再度緊急事態宣言にならないそうです。

(厚生労働省HP:新型コロナウイルス感染症について概況陽性者数8月10日閲覧改変)



SARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査


全ての自治体ではないようですが、国立感染症研究所では新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム配列を確定し、感染クラスターに特有な遺伝子情報そしてクラスター間の共通性を解析しています。まとめの一部を抜粋します。欧州系統のコロナウイルスが自粛にも関わらず、軽症もしくは無症状の人でウイルスが残り、その後の感染の拡大を引き起こした可能性があるということです。

  • 欧州系統(3⽉中旬)から さらに 6 塩基変異を有しており、1ヶ⽉間で2塩基変異する変異速度を適⽤すれば、ちょうど3ヶ⽉間の期間差となり時系列として符合する。
    SARS-CoV-2 の変異速度は現在のところ 24.1 塩基変異/ゲノム/年(つまり、1年間で 24.1 箇所の変異が⾒込まれる)と推定)とされています。
  • この3ヶ⽉間で明確なつなぎ役となる患者やクラスターはいまだ発⾒されておらず、空⽩リンクになっている。この⻑期間、特定の患者として顕在化せず保健所が探知しづらい対象(軽症者もしくは無症状陽性者)が感染リンクを静かにつないでいた可能性が残る。
  • 6⽉下旬から、充分な感染症対策を前提に部分的な経済再開が始まったが、収束に⾄らなかった感染者群を起点にクラスターが発⽣し、地⽅出張等が⼀つの要因になって東京⼀極では収まらず全国拡散へ発展してしまった可能性が推察された。

(出典: 新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査2 (2020/7/16現在))


新型コロナウイルスは、症状のない個人によっても感染する能力を持っていることが知られています。ウイルスの脱落は、症状が始まる少なくとも24〜48時間前に起こり得、症状発症時にピークを迎えると考えれられています。初期曝露から症状発現までの期間現在の推定値は、中央値が5日ぐらいというデータもあります。ここから感染リンクを静かにつないでいた可能性を考慮するということで、ざっくり計算すると、5日〜7日で一人に感染させるとして、3ヶ月で12人〜18人程度無症状で広がったということになります。(実際には1人が複数に感染させることもあるはずです。) 

夜の街関連に行き着くまでに、例えば、陽性になった方(1)がいて、その大学での友達(2)、友達の友人(3)、友人の両親(4)、両親の職場(5)、職場の出入りの人(6)、出入りの職場の人(7)。これくらいでも、7ステップです。最初に陽性になった人は出入りの職場の人とほぼほぼ面識ないように思います。



医療マーケティングから考える新型コロナウイルス下の経済


社会学者のエヴェリット・ロジャースが普及曲線として、イノベーターやマジョリティの概念を数学的に表しました。この概念を使うとコロナ禍はどのように表されるのでしょうか。まず、人や店によって、感染症の対応がまちまちだという印象です。また、どんなに注意しても、自粛中、動く人は動くし、もう大丈夫だと言っても動かない人は動かないということがあります。三密を回避したから、行動を8割自粛したからというより、動きにくい人まで感染に対して注意を払ったことも一因のように思います。パチンコ店の自粛が象徴的でした。末尾に参考を記載しました。


もう一つ、「経済の問題=コロナ禍以前に戻すこと」と考えると、チグハグなことになると思います。無症状や発病前の人がいるので、経済対策の目的を「感染拡大により失われた観光客の流れを地域に取り戻し、観光地全体の消費を促すこと」とすると、この流れの中に、感染した人が紛れ込む状況が考えられます。新しい経済を作らないといけない状況なのに、旧態依然としたものをサポートしているように思えます。
スポーツやイベントがなくなると、テレビもコンテンツがなくなるということも今回よく分かりました。


経済と医療が対立するものではありません。経済の問題をコロナ禍でも貨幣・情報が流通することとして、全体を組み直した方がいいように思います。


【参考】wiki普及学より加筆・改変(非常事態宣言解除後のウイルス感染の状況に当てはめてみる)

  • イノベーター(2.5%): 新しいアイデアや技術を最初に採用するグループ。リスクを取り、年齢が若く、他のイノベーターとも交流する。リスク許容度が高い。→ いわゆる夜の街
  • アーリーアドプター(13.5%): 採用時期が2番手のグループ。オピニオンリーダーとも言われ、他のカテゴリと比較すると周囲に対する影響度が最も高い。年齢は比較的若い。経済的に豊かで、教育水準は高く、社交性も高い。イノベーターよりも取捨選択を賢明に行い、オピニオンリーダーとしての地位を維持する。→夜の街に通う人の友達・職場仲間
  • アーリーマジョリティ(34%): このカテゴリの人は一定の時間が経ってからアイデアの採用を行う。アーリーアダプターとの接点も平均的に持つ。→アーリーアダプターの職場の家族・学校
  • レイトマジョリティ(34%): このカテゴリにいる人は、平均的な人が採用した後にアイデアを採用する。イノベーションが半ば普及していても懐疑的に見ている。→濃厚接触者の接触者、履歴不明のクラスター
  • ラガード(16%): 最も後期の採用者。他のカテゴリと比較すると社会的な影響力は極めて低い。変化を嫌い、高齢で、身内や友人とのみ交流する傾向にある。→何がなんでも気をつけている人


(関連情報)

医療統計から考えるアビガンのマーケティング戦略(新型コロナウイルス)(2020/6/6)
新型コロナウイルスの第2波(第3波)について思うこと(2020/5/30)
新型コロナウイルスについて(2020/1/27)
臨床論文に出てくる試験デザインの分類と種類