2019/03/28

臨床論文に出てくる試験デザインの分類と種類

はじめに

医療系の論文・文献には○○試験というものが何種類も出てくる。ざっと挙げただけで試験という名の付くものは下記のようなものがある。特にこういった文献を読み始めた初学の時には混乱しがちである。
  • 無作為化試験
  • クロスオーバー試験
  • 既存対照試験
  • 優越性試験
  • 非劣性試験
ではどうすればいいかというと、時間軸や介入の有無で試験デザインを分類すると分かりやすい。 時間軸は前向き研究(prospective study)や後ろ向き研究(retrospective study)と言われるもので縦断研究と言われる。横断研究はある時点での状況を表したものになる。

介入試験

もう一つの介入とは一般には使わない言葉だが、辞書には自然ではない管理した状態を表すとある。英語ではInterventionだ。介入の対義語は傍観であるが、ありのままということになる。なので、介入とは「ありのままでない」ということで、人為的に試験の環境を整えて、試験結果を精密にしようとする試みを言っている。言い換えれば、介入研究の目的は既知・未知の交絡因子の影響を最小限にとどめるようにすることだとも言える。交絡因子とは因果関係に間接的に影響を与える条件のことをいう。

この介入研究には比較する群、対照群(コントロール群)があるかないかによって更に細分化される。対照群がある場合の例としては、無作為化試験、クロスオーバー試験がある。他方、単群での介入試験としてはhistorical controlと呼ばれる既存対照試験がある。介入研究は何かしらの試験環境を整えてからある程度予想できたとしても未知な結果を導き出す所作であると考えれば、全て前向きであることが分かる。

優越試験と非劣性試験

もう一つ、優越性試験、非劣性試験は介入試験の判定をどのように行うかで分類したもの。優越性試験ではいずれかの群が他の群より有意に優れているかを検証する。非劣性試験では、ある範囲であれば同じだろうと思われる範囲、非劣性マージンを設けて、そのマージンよりも劣らないということを証明する。優越性試験だけではどちらの薬がいいか悪いのかだけの結論になってしまうが、実際には効果が似たようなものであれば、副作用が少ないものの方がいいこともある。これが非劣性試験が行われる主な理由になっている。

観察研究

介入研究に対して観察研究がある。何らかの手を加えて理想的な試験状態を作らない、ありのままがどうなっているのかを知るための研究だ。観察研究では対照群がない場合は記述研究、ある場合は分析研究となる。コホートという言葉が出てきたら疫学における観察研究になるので、検証的な臨床試験ということはない。ちなみに、コホートとは「共通点があり、観察の対象とする集団」のことをいう。例えば、健康な人の集団で、血圧や栄養状態を調査し,その後一定期間追跡調査を行い,疾病の罹患や死亡を確認するような研究をいう。ある時点から将来に渡って調べているので、前向き研究(prospective study)になる。後ろ向き研究(retrospective study)としてはケースコントロール研究があり、自施設の治療歴から予後を比較するような研究をいう。



まとめ

なぜこんなことを書いたかというと、文献の検索をしているとどういう目的で文献が書かれているかを見失うことがあるからだ。いわゆる観察研究なのに検証結果を探してしまったり、介入試験の患者背景を疫学として扱ったりすることだ。文献がどの分類に当たることを報告しているか見当をつけることで少しだけ労力が減ることを願っている。