2018/05/24

カプランマイヤーなどの生存時間解析で試験の背景比較がよくない訳

生存時間解析とは

臨床研究のうち特にがん研究は病気の悪化や死亡までの時間に差があるかが薬剤としての価値を決めます。工学では家電製品の寿命が信頼性研究として1つの分野となっており、様々な手法が応用されています。医療の分野への信頼性研究の応用が生存時間解析。イベントとして病気の悪化や死亡をカウントします。生存時間は縦軸に全体の割合、横軸に時間をとったグラフで分析されます。
生存時間解析でコックス比例ハザードモデルやワイブル分布が登場するのは、これらのモデルや分布の制約条件により数学的に寿命が説明できるようにするためです。

カプランマイヤープロットの見方

カプランマイヤーで表される図には全生存期間(OS:overall survival)や無増悪生存期間(PFS:Progression-Free Survival)などがあります。どのようなイベントを見ているかにより縦軸がOS(%)になったりPFS(%)になったりします。生存期間中央値とは縦軸を50%にとったときの横軸の期間を表します。
また、censored(打ち切り)とは臨床試験の中止や参加の取りやめでイベントが生じる前に観察が終了したことを言います。 下記のグラフでは十字で示したところです。

このようにカプランマイヤーによる図示は中央値の差を見やすくしてくれます。
抗がん剤治療では標準治療との比較では、log-rank test(ログランク検定)や一般化 Wilcoxon 検定が用いられます。




試験背景の比較

カプランマイヤー曲線はイベントの発生状況を知るのに見やすい図ですが、薬の効きの長さを直接示している訳ではありません。
試験によっては状態の悪い方がいれば必然的にイベントが増え、中央値は短くなります。 比較対象の治療でも状態が悪ければ両群の比較で有意差が出ます。 統計学としてはそこまでのことしか言っていません。 異なる試験間で中央値が単純に比較できないのは、試験背景が異なるからです。
抗がん剤に限らず似たような機序の薬では、競合となる医薬品の直接比較の結果は難しいです。 発売されたばかりだとメタアナリシスできるような試験数もないような状況です。