2018/08/17

有意水準と確率値の違い。過誤の種類とP値の読み方

有意水準と確率値の関係

第3相試験のように検証的な試験では、P値には2つの可能性があります。 1つは有意水準でもう1つが臨床試験のデータから計算された確率値(P値)です。
検証的試験は何度試験をしても同じ結果が得られることを期待して設計されます。 例数設計などの手段を使っています。 「P=・・・」と書かれた場合はある例数の時に計算されたP値(確率値)です。 繰り返し同じ試験をすることが可能な場合はこの確率値は毎回少しずつ違うものになるでしょう。 P<0.05などの有意水準は判定値を示します。上手く試験が行われた場合に試験の確からしさを有意差として示します。(帰無仮説の棄却

2通りの試験結果が外れるパターン

仮に試験を複数回行うとまぐれで有意水準を満たすことがあります。 本当は間違っているのに正しいと判断してしまうことを第1種の過誤と言います。 逆に本当は正しいのに間違っていると判断することを第2種の過誤と言います。 結果が外れるパターンにはこのように第1種の過誤(Type Ⅰ error:偽陽性False positive、αエラー )と第2種の過誤(Type Ⅱ error:偽陰性False negative、βエラー )の2通りがあります。 第1種の過誤は「あわてん坊のエラー」、第2種の過誤は「ぼんやり者(見過ごし)のエラー」とも言われます。
過誤の表現に対する別表現
  • 第1種の過誤(Type Ⅰ error)
    偽陽性False positive、αエラー → 「あわてん坊のエラー」
  • 第2種の過誤(Type Ⅱ error)
    偽陰性False negative、βエラー → 「ぼんやり者(見過ごし)のエラー」

過誤を考慮した有意水準の設定

一般的に有意水準を表すP値は第1種の過誤の判定値(α)を表します。 第1種でも 第2種でも過誤の確率は小さいに越したことはありませんが、両方の過誤を同時に小さくすることはできません。そのためα<0.05など過誤の水準を一定値まで認めるということで試験デザインに記載されます。これがP<0.05となります。 不等号で書かれたP値が常に有意水準を表すかというと、確率値の小数点以下で有効桁数よりも小さい場合に「P<0.00…」と書かれることがあります。試験が複数回行われると確率値が異なることから考えると、確率値が小さいからといってそれが有意差の大きさを示さないこともわかると思います。
時々医療用医薬品を説明する資材で有意水準を表しているのか、実データからの値を示しているのか分からないものがあります。資材を読む際や説明をしたり、されたりする際には一度確認してみるといいかもしれません。

まとめ

試験に差があるかどうか、誤まって差があるとしたり 、見過ごされるかのバランスを考える必要があります。これを過誤として説明しました。1回の試験で見出された確率値とこの過誤のバランスから判断される有意水準の違いを説明しました。 

下記の電子書籍では有意水準の説明をグラフを用いて説明しています。パラパラと読めるようにしたつもりなので、是非統計の入門書としてご活用ください。

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