2020/12/06

新型コロナウイルスのワクチンについて考える

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photo by NIAID

2020年12月6日の情報に基づき記事を作成しています。
内容については精査しておりますが、最新の情報をご確認上ご判断ください。



ワクチンの意義とは


ワクチンには2つの意義があります。1つ目の意義はワクチンを受けた人がその感染症から身を守ること(感染予防・発症予防・重症化予防)が出来ることです。一般に、ワクチンで予防できる病気をVPD(Vaccine Preventable Diseases)と言います。もう1つの意義は、社会全体から感染症を排除を目指すということです。前者を個人的防御、後者を社会的防衛と言います。


日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」



安全性について(副作用?副反応?)


メディアに登場する(自称)ワクチンの専門家を見分けるリトマス紙が1つあります。ワクチンの安全性を「副作用」というのか、正しく「副反応」というのかです。


「副作用」と「副反応」は混同して使うには、物事の議論を変な方向に誘導する危険があります。医薬品における副作用とは、イメージの通り薬の効果以外に(発熱とか)有害な出来事がその医薬品に起因して起こることを言います。医薬品は治療に用いるものなので、病気の人が使います。 その一方、ワクチンでは接種された人に感染を防ぐ仕組みを作り(免疫を誘導して)目標とする病気(VPD)に罹らないようにします。「副反応」とは、ワクチンによる効果以外の反応のことを言います。ここで重要なのは、ワクチンは感染していない人(いわゆる健康な人)に打つということです。


健康な人に病気を防ぐためにあえてリスクを取る、これがワクチンです。ワクチンで副作用と言う言葉を使う場合、個人的防御として考えているように思いますが、社会的防御を考えたときにはこの意味が180度異なります。


これを理由もなくわざと混同させるのは罪作りのような気がしますが、意識せずに使っているのであればそれ以上に問題があると思います。


ただ、下記の厚生労働省も行政の方も「ワクチンの接種は、感染症を予防する効果が期待される一方で、副作用による健康被害を、極めてまれだが、完全に回避することは難しいというリスクもある。」とか「開発中のワクチンの副反応(副作用) 」と「副作用」となっているので、一般国民に理解しやすくするためなのか、どうなのか一度聞いてみたいところではあります。会議資料は全て副反応になっているので、理解のためなのでしょう。



さておき、感情をなるべく抑えて、理性だけで考えてみます。ワクチンによる副反応が不可避だとしても、「ワクチン接種による死亡・重篤な副反応」数が「感染症による死亡・重度の後遺症」数を下回るのであれば、積極的にワクチンを打つことがいいことが分かります。重症者が減れば高度な医療を必要とする数も減りますし、医療資源に関わる部分でもプラスに働くと思われます。


  • ワクチン接種による死亡・重篤な副反応 < 感染症による死亡・重度の後遺症


一方で、自分や子供たちがワクチンを接種すると考えると、途端にこの不等式が成り立たなくなります。これまで日本でもワクチンの副反応は裁判にまでなっています。

社会全体のバランスを考えた時、社会的防衛を達成するために、関係者や行政側が心血を注いできた歴史とも言えます。極めてデリケートな問題だと思います。


新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴って、これまで想定しなかったような事態になっています。「ワクチンの有効性と安全性のバランスを考えて…」というバランスの支点が少し動いてきたようにも見えます。


上記の不等式は単純化しましたが、実際には安全性のベースラインはどこにあるのか。有害事象と副反応の切り分けなど考慮しないといけない点は多々あります。




ワクチンの専門家はどこにいるのか


ワクチンは小児科領域でワクチンが扱われることが多いです。子育ての経験がある方は思い当たることがあるはずですが、生後直後から高校生くらいまで予防接種のスケジュールが詰まっています。日本小児科学会では予防接種のスケジュールなどが公表されています。



情報提供を行う医療広告と患者を目の前にする臨床は違うと思いますが、私は、感染対策や治療と予防接種は別分野だと感じています。医療広告でも、キャリアの中で様々な分野に関わることはあると思いますが、抗生物質や抗ウイルス薬を担当していることを理由にワクチンを担当することになることはあまりないように思います。ワクチンが病気になってからではなく病気になる前に対処することを目的としているからです。そのため要求されるスキルが異なります。



まとめとして


現在、話題に上がっている開発中のワクチンは実績のあるというか伝統的なワクチンの開発方法ではなく、核酸やウイルスベクター等の極めて新規性の高い技術が使われています。ほぼほぼ実用化し得るバイオテックが出揃っている状況だと思います。リコンビナントくらいまでは理解できるのですが、遺伝子導入的なものもワクチンと言っていいのか、正直、新規開発されているワクチンのメカニズムまで追いついていません。少し調べたらまた書くかもしれません。

(散々新聞やらニュースで取り上げられていますが、ワクチンのメカニズムは要は医薬品で言うところのプロドラッグのようなもののようです。2021.2.7)



反応事例について(2021.2.7追記)


ファイザーのワクチンで英国の2例と米国の1例のアレルギーを調べてみました。今回のアレルギーは添加剤(ポリエチレングリコール誘導体)が原因のようです。添加物(及び交差反応)のアレルギーに注意となります。エピペンなどの対応方法も十分検討されているようなので、不要な情報かも知れませんが調べたので載せておきます。


コロナのワクチン副反応に関する総説とCDCのサイトになります。


2021年3月1日に日本アレルギー学会からもアナフィラキシーについての見解が出ていました。(3月6日追記)


(関連情報)
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