2018/09/21

平成29年度の医療費は42.2兆円。診療報酬改定結果検証アンケートの承認なども議題に。(平成30年9月26日中央社会保険医療協議会)


中央社会保険医療協議会が開催されました。

開催内容


日時: 平成30年9月26日(水)10時00分 ~ 12時00分
場所: 中央合同庁舎第5号館 講堂(低層棟2階)


臨床検査の保険適用について


抗表皮自己抗体 検出キット「FR」(富士レビオ株式会社)が承認されました。
自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の診断の補助に使われます。


診療報酬改定結果検証部会からの報告について


平成30年度診療報酬改定の結果検証のためのアンケート案が承認されました。来年の2月くらいを報告書の取りまとめの目標して進められます。アンケート内容にはかかりつけ医機能等の外来医療、在宅医療と訪問看護、働き方改革(医療従事者の負担軽減)、後発医薬品の4つの大項目があります。

かかりつけ医療に関するアンケート


かかりつけ医療の項目では「機能強化加算」の新設、地域包括診療加算・地域包括診療料・小児かかりつけ診療料が医療連携などのシステムに与えた影響をアンケートで確かめることが目標です。患者が大病院に受診そたいと思う理由を明らかにするための再診時定額負担についての問いもあります。
この話の中で興味深かったと私が思ったのは、明細書と領収書の受け渡しのタイミングが実は明確ではないということです。消費財の買い物と異なり、品物であれば買った物が後からでも追いかけることができるのですが、医療サービスだと明細が全てになってしまうことがあります。医療の形態が地域に移行していく時に、サービス提供のあり方を気にされている委員の方がいらっしゃいました。医療提供者側の意識の高さが求められます。
その他、施設に対しては地域包括診療料、地域包括診療加算の実施状況を、患者に対してはかかりつけ医の制度をどの程度認識しているかの問いもあります。 地域における小児への活動も取り上げています。

在宅と訪看に関するアンケート


在宅医療、訪問看護の医学的管理の状況や介護関係者との連携について調査します。

働き方改革に関するアンケート


働き方改革では他職種との連携や勤務負担軽減の取り組みについてアンケートします。 医師や看護職員の負担軽減に資する加算の評価の充実を医師、看護師、薬剤師責任者に対してアンケートを行います。

後発品に関するアンケート


後発医薬品の調査は毎年行っています。NDBにある電子レセプトデータの情報分析をもって調査の一部とする。 現状の調査では品目数が少ないことから別扱いで後発品の中にバイオシミラーは考慮されていない。低分子の医薬品を対象とした調査であるとのこと。
先発後発品、バイオしミラーに関しては状況が複雑のようなので別途記事を作成できたらと思っています。


DPCデータの提出に係る対応について


NDBと介護データとの連携が求められているが、DPCは包括なので診断や治療の明細が不明となることがあるとのこと。オーダリングシステムがあれば後から追うことができるが、DPCの仕組みは包括なのでそもそも中身が分からないこととなる。DPCと介護データを連携を考えるにはDPCの明細を揃える法的な制度も考慮に入れなければいけないとのこと。



診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」からの報告について


抽出したデータベースのタプル(行)に重複があったということらしいです。今後はデータベースの専門家もこういった医療の場で活躍していく必要があると思いました。



消費税率引上げに向けた今後の進め方について


消費税が導入、増税された際のこれまでの対応がまとめられた。
  • 消費税導入時(平成元年4月)、5%引上げ時(平成9年4月)
    消費税導入・引上げ時に、診療報酬改定(平成元年+0.76%、9年+0.77%)を 行い、医療機関等の消費税負担上昇分を補てんし、全体として、医療機関等の 消費税負担に診療報酬で対応した。
  • 消費税率8%引上げ時の対応(平成26年4月)
    平成26年4月の消費税引上げでは、医療機関等の実態調査に基づき、消費税対応分として、必要額(診療報酬改定全体+1.36%)を確保した。
    • 診療報酬本体(+0.63%):多くの医療機関等に手当される等の観点から、初再診料、 入院基本料等の基本的な点数に上乗せ
    • 薬価・特定保険医療材料価格(+0.73%):市場実勢価格に消費税3%分を上乗せ
    全ての仕入れ価格が3%引き上げられ るわけでない(非課税仕入れが存在)の で、改定率は1.36%相当した。
  • 消費税率10%引上げに向けた対応(平成31年10月)
    診療報酬本体、薬価・特定保険医療材料価格について、平成31年10月の消費税率10%への引上げを見据え た対応を今後検討することになった。
委員からは薬価改定や次回改定の調査などと合わせて立て込むので現場のためには簡素化した手法を求めたいという意見が出ていました。



最近の医療費の動向について


医療機関からの診療報酬の請求に基づいて、医療保険・公費負担医療分の医療費を集計として「平成29年度 医療費の動向(概算医療費の年度集計結果)」について説明があった。
【調査結果のポイント】
  • 平成29年度の医療費は42.2兆円となり、前年度に比べて約0.9兆円の増加となった。
  • 医療費の内訳を診療種類別にみると、入院17.0兆円(構成割合40.2%)、入院外14.4兆円 (34.1%)、歯科 2.9 兆円(6.9%)、調剤7.7兆円(18.3%)となっている。
  • 医療費の伸び率は+2.3%。診療種別にみると、入院+2.6%、入院外+1.6%、歯科+1.4%、 調剤+2.9%となっている。
  • 1日当たり医療費の伸び率は+2.4%。診療種別にみると、入院+2.0%、入院外+2.1%、 歯科+1.3%、調剤+1.8%となっている。
  • 医療機関を受診した延患者数に相当する受診延日数の伸び率は▲0.1%。診療種別にみると、 入院+0.5%、入院外▲0.5%、歯科+0.1%となっている。
    資料にある医療費は、速報値であり、労災・全額自費等の費用を含みませんが、費用全体の推計値である国民医療費の約 98%に相当しています。
電算処理 分のレセプトを集計に基づく「平成 29 年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」について説明があった。
【調査結果のポイント】
  • 平成29年度の調剤医療費(電算処理分に限る。以下同様。)は7兆6,664億円(伸び率+3.1%) であり、処方せん1枚当たり調剤医療費は9,187円(伸び率+1.9%)であった。
    その内訳は、技術料が1 兆 9,122億円(伸び率+3.4%)、薬剤料が5兆7,413億円(伸び率+ 2.9%)、特定保険医療材料料が130億円(伸び率+1.6%)であり、薬剤料のうち、後発医薬品が1兆92億円(伸び率+16.9%)であった。
  • 処方せん1枚当たりの調剤医療費を年齢階級別にみると、年齢とともに高くなり、75 歳以上で は11,173円と、0歳以上5歳未満の3,275円の約3.41倍であった。
  • 後発医薬品割合は、平成29年度末で数量ベース(新指標)が73.0%(伸び幅+4.4%)、数量ベ ース(旧指標)が50.2%(伸び幅+4.8%)、薬剤料ベースが19.0%(伸び幅+3.0%)、後発医薬品調剤率が70.8%(伸び幅+3.4%)であった。
  • 内服薬の処方せん1枚当たり薬剤料の伸び率は+0.8%となっており、この伸び率を「処方せん 1 枚当たり薬剤種類数の伸び率」、「1 種類当たり投薬日数の伸び率」、「1 種類 1 日当たり薬剤料の 伸び率」に分解すると、各々▲1.0%、+2.1%、▲0.4%であった。
  • 平成29年度の調剤医療費を処方せん発行元医療機関別にみると、医科では病院が3兆1,372 億円(伸び率+2.0%)、診療所が4兆5,048億円(伸び率+3.8%)であり、平成29年度末の後発医薬品割合は、数量ベース(新指標)で、病院が73.3%(伸び幅+4.3%)、診療所が 72.8%(伸び幅+4.4%)であった。また、後発医薬品割合(数量ベース、新指標)を制度別でみた場合、最も高かったのは公費の76.8%(伸び幅+3.4%)、もっとも低かったのが後期高齢者で70.7%(伸び幅+4.3%)であった。
  • 平成29年度末の後発医薬品割合を、数量ベース(新指標)の算出対象となる医薬品について、 薬効大分類別にみると、薬効大分類別の構成割合が最も大きい循環器官用薬は 74.1%、次いで大きい消化器官用薬は 83.6%であった。


その他

平成 30 年北海道胆振東部地震による被災に伴う 医療保険制度の主な対応状況について報告された。