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2018/01/02

検定の多重性について

多重比較の必要性

多重比較が臨床試験に登場するのは、複数の評価項目がある場合です。
多重検定をする理由は、一度の臨床試験結果から、複数の比較して沢山の情報を得たいという倫理面の問題が大きいように思います。

多重比較について、深く求められることがあるのは、検定回数を増やすと、どこかで有意差が出る(第1種の過誤)可能性/確率があるためです。この多重比較の問題を解決するために検出量の調整方法(多重性の調整)と手順の2つのアプローチがあります。
まず、検定を複数行う中で調整して行く考え方が、Familywise error rateとして発展してきました。また、手順としては、検定に順序をつけ、各段階で有意水準を守るようにすれば全体として有意水準を保てるという考え方(閉検定手順:閉手順)が利用されています。


多重性の検出力による調整

多群比較の後に全ての群の組み合わせについて比較を行うテューキーの多重比較検定(Tukey's multiple comparison test)もありますが、下記の2つが知られています。

  • bonferroni法 (検定する数で検出力を調整)
  • holm法 (Holm法は、bonferroniを多段階に改良したもの) 

多重性の手順による調整

統計的手順をコントロールすることで全体として有意水準を保つGatekeeping法があります。 このGatekeeping法には、下記の3種類があります。

  • 非劣性試験が検証された後に優越性試験を行う直列型 
  • 標準薬と治験薬の両方がプラセボより優越した場合に、標準薬と治験薬を比較を行う並列型 
  • 中間解析のようにエンドポイントが分岐する分岐型 

最近の作成要領とのルールに照らして

製薬協の作成要領(医療用医薬品における広告の自主規制)では、臨床研究の結果を医師に知らせるために試験の概要を書くことになっています。最近の改定では、臨床試験の結果だけでなく、どのように行われたか(解析手順)まで書くようになりましたので、これれについても触れてみました。

2017/09/26

OTC広告の規制が変更に(2017.9)

日経新聞に下記のような記事がありました。

薬の広告、表現柔軟に 厚労省 15年ぶり基準見直し


厚生労働省は医薬品などの広告基準を15年ぶりに見直す。特定の性別や年齢をターゲットにする表現を認め、例えば生理痛に効果がある医薬品の効能をアピールしたい場合に「女性向け」といった表現が可能になる。厚労省は今月下旬にも新基準を都道府県に通知する方針。医薬品メーカーなどの販売戦略の自由度が高まる。」(引用)ということで、新発売の期間は6ヶ月から1年になるような規制改革について載っていました。

元資料はおそらく、『規制改革推進会議 医療・介護・保育WG資料 「一般用医薬品及び指定医薬部外品の 広告基準等の見直し」について( 平成29年6月22日)』だと思います。


資料として記載のあるのは、「第16回医療・介護・保育ワーキング・グループ 議事」になります。厚生労働省提出資料に詳しく出ていました。こちらの議論が済んだということなのでしょう。

昭和55年に制定された医薬品等適正広告基準を現在の目で見直すことをしているようです。国民ニーズあるいは広告の実 態などの変化に伴い、現在にはそぐわない部分が存在していることが理由ということでした。

簡単に感想を・・・。
1. 名称の記載について、
外国の方もいるので、アルファベットの併記を可能に。
オリンピックもありますし、いいのではないでしょうか。

2. シリーズ名を緩和
鼻風邪には・・みたいなのでしょうか。
商品のブランド化が進むのかもしれません。

3. 使用感の表現
目薬などの使用感に関する表現は可能としていたが、「ことさら強調する」 のは消費者に誤解を与える。確かに、使用目的を誤らせるような過剰な表現は決していいことではないように思います。「すっとする」とかでしょうか・・・。

4. 特定の成分を含んでいない
例えば、カフ ェイン、ナトリウム、ステロイド、抗ヒスタミンといったものを含んでいないという表現 を可能とする。これは、妊婦さんとかはいいかもしれません。
普通に伝えればいいと思うのですが、売る側が他者誹謗などでグレーラインを踏まないことを祈ります。消費者への情報提供有用な情報であることは間違いないと思います。

5. 特定年齢、性別等向けの広告表現
消費者に不利益を与えるものではないので、いいかも・・・。ターゲティングのようなものを想定しているのでしょうか。

6. 販売歴の表現
単なる事実の記載のみであれば、OKということになるらしいです。家伝薬とかきちんと宣伝できるようになるといいと思います。

7. 「眠くなりにくい」といった表現
消費者にとっては有 益な情報と思います。
これも、カフェインと一緒で、販売側が、どれだけ自制心を持って取り組めるかということになると思います。


8. 「新発売」という表現の使用期間
現行では6か月を1年間にする。妥当だと思います。

9. 多数あるいは多額購入した場合に値引き
医薬品で値引き表現は、さすがにおかしいと思います。配置薬的なものもありますが、医薬品は本来必要な時に必要なだけ飲めばいいものだと思います。薬は飲み過ぎれば毒にもなることを訴えて行く必要があるように思います。健康食品とかなら分かるのですが、議論になることもおかしいように思います。

10. ビタミンについて
同じ成分なのに、違う効能が書いてある商品が出回るように思います・・・。
こちらも商品のブランド化が進むのかもしれません。現場での説明が難しくなりそうです。

(関連コンテンツ)
震災経験(3.11)から考える医薬品の安定供給

2017/09/25

貿易摩擦と医薬品規制の歴史


医薬品が病院で使用できるようになるまでには、発見された物質が臨床試験され、当局(厚生労働省)に認可される必要があります。医薬品の申請について概要を理解することは、製薬業界に転職もしくは新卒で入社を希望する人に役立つかもしれません。


ここで医薬品は、主に病院で使われる医療用医薬品のことをさします。
医薬品と一般の消費財との違いは、国、行政機関が認めたものでないと販売ができない
認可制のものであること。違反すると薬機法違反になりつかまります。


医薬品の効果や安全性(価値や限界)を知るには、臨床試験が必要になります。
医薬品が、毒や食べ物の違うのは、薬として使われるまでに、人体への安全性と効果について、きちんと検討されているからです。医薬品の見た目は、タブレットやカプセルにして多少区別がつくようになっていますが、粉か液体のような形をしています。
医薬品が価値を出すのは、体に害がなく(少なく)病気に効果があるということです。
これを証明するためのヒトに対する試験が臨床試験であり、効果や安全性が国(当局、厚生労働省、PMDA)に認められて、病院などで使用できるようになっていきます。


こういった臨床試験には一定のルールがあり、一般に医療は、規制が強いとか悪く岩盤規制などと言われています。特に、経済活動をしている人は、普段元気なために意識しないのかもしれません。いわゆる国民皆保険制度で、医療費の負担が実際に支払わないといけない費用の1割から3割であることがあります。これも医療費が身に差し迫ったこととして考える契機にならない原因かもしれません。ともすると、儲かるからとか、あたかも規制が悪いような論調で、規制を撤廃しようという話になります。ただ、医療は生きるか死ぬかの問題であることを考えると、経済の理論だけで述べるのは危険だと思います。

医薬品が病院で使われるようになるために、製薬会社が当局に申請する資料を承認時申請資料と言います。承認時申請資料は、1990年代前後までは、独自の基準や言葉の統一などされていなかったようです。

時代的な背景を振り返ると、1986年12月-1991年2月までバブル景気とそれに続くバブルの崩壊、1995年のWindows95発売、その後のインターネットの急速な普及。世の中的にはそのような状況で、政治的には、中曽根康弘首相とレーガン米大統領は、「ロン・ヤスの仲」で知られていたようです。彼らの一つの成果が、 1985年から1986年にMOSS協議で特定分野(エレクトロニクス,電気通信,医薬品・医療機器,林産物等)の日本市場に関する話し合いのようです。

医薬品規制の国際化は、1990年に ICH( International isation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:日米 EU 医薬品 規制調和国際会議)という団体を背景に行われました。この会議体は、不必要な繰り返しの防止、新医薬品の開発,承認申請の効率化を目的として、日本、米国、 EUの医薬品行政当局と製薬産業界の代表で設立されました。具体的には、新薬承認審査のための医薬 品特性検討に必要な試験の実施方法やルール、提出書類標準化等の作業をしています。

90年代、医薬品市場の大きさを考えると日本は、7割くらいの大きさがあったようです。国際基準を作ることで規制が事実上規制が国際的なものに置き換わっていきました。
大体、2000年以降に発売された医薬品は、これらの国際的な基準を元にしています。

2000年頃からのバイオ医薬品の上市(発売)と相次ぐ日本国内の研究所の閉鎖と国際化も無関係な動きではないと思います。

ICHの発足が、医薬品の申請が国際的な基準になっていった端緒です。
また、ICHの基準を読み解くと医薬品がどのようにできていくのかがわかると思います。