2020/06/21

分散分析(ANOVA)の理解を深めるために

医療統計で使われる分散分析(ANOVA)について


医療統計でよく出てくる統計手法に分散分析があります。分散分析の英語での名称はANalysis Of VArianceです。 大文字部分をとってANOVAとも呼ばれます。

例えば、降圧剤の試験で、薬の種類や投与量を変えて血圧値を測り、効果を見たい場合などに使われます。プラセボと薬A、薬Bなど薬の種類のみを変える時、データの値を変化させる原因(変数)は1つとなります。このような分散分析を一元配置分散分析(one-way ANOVA)といいます。薬の種類と投与量を同時に変化させる場合は、二元配置分散分析と言います。 一元分散分析も二元分散分析も考え方は分散分析として同じです。


分散分析の考え方


分散分析の利点は、多群の比較ができることです。t検定では2群までしか比較できませんが、分散分析では、3群以上の比較に用いられます。上記の例だと薬の種類を複数種類(3種類以上)一度に検定できます。2群の場合はt検定でも結果が同じになるので、通常は用いられません(わざわざ使う必要がありません)。t検定の多群への拡張が分散分析と考えることもできます。

t検定が平均値と標準誤差から説明できることを下記の著書により説明しましたが、分散分析も同様の考え方で、有意差を説明できます。


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分散分析法のネーミングが直感的な理解を妨げているように思います。これは歴史的な経緯もあります。1918年に『The Correlation Between Relatives on the Supposition of Mendelian Inheritance(メンデル遺伝の仮定における親族間の相関関係)』という論文で、ロナルド・フィッシャー(Ronald Fisher)が「分散」という用語(概念)を使ったのが始まりです。その後、1925年にフィッシャーが『Statistical Methods for Research Workers(研究者のための統計学的方法)』に分散分析法を載せたことで、広く知られるようになりました。最初に分散(の概念を用いること)に気がついて「分散」分析と言ってしまったのですが、分散を分析するのではありません。分散を用いて、多群の平均値とバラツキを分析する手法が分散分析法になります。

分散分析は、「2つ以上の群の中の標本が同じ平均値を持つ母集団から取られた」という帰無仮説を検定」するための方法であり、具体的にどの群とどの群の間に差があったかを知るためには、多重比較を行う必要があります。
もう少し口語的に書き直すと、検定の結果「薬の種類を変えたとしても降圧効果に差がなかった」とはどうも言えない場合(きっと何か差がある!有意差あり)でも、どの薬のために結果が変わったのかは分からない、となります。


分散分析における数式の見方


「医療統計入門」では、数式を使用せずに説明をしましたが、こちらでは少し数式を扱いたいと思います。


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話がややこしくなるので、プラセボ、薬A、薬Bの3群(a=3)を比較をする一元配置分散分析で、かつ、理想的な場合を想定して、各群の試験回数はn回で共通とします。(途中でデータが取れなかったりすることがなく、綺麗なデータが取れたとします。)

その時にF値は下記のように表せます。


分散分析のF値(F-value in ANOVA)


分散分析では、効果(によって説明される平均平方)を分子、誤差(によって説明される平均平方)を分母とすることでF値を計算します(F検定)。

具体的に見ていきます。統計においては、数値の大きさを比較したい場合に、符号の絶対値ではなく、2乗することがあります。


|-1| < |2| < |-3| (絶対値の大小)
(−1)2 =1
  22 =4
(−3)2 =9
 1 < 4 < 9 (2乗の大小) 


Σは和を取るということなので、aiとeijが何を示しているのかが分かれば、分散分析の数式で何が比較されているかを理解できたことになります。

結論を言うと、aiとは全部の群の平均値から各群までの平均値の差になります。 eijは各群の平均値から試験された個別のデータまでの差になります。 言葉で説明されるより図を見ていただいた方が理解しやすいと思います。


分散分析(ANOVA)

νaは自由度(群間)、νeは自由度(残差)になります。自由度は群数や試験回数(データ数)で表される補正値になります。


νa = 群数(a)-1
νe = 群数(a)×(試験回数(n)−1)


具体的にデータがどのような平均値、バラツキを持った時に有意差が出るのかについては、著書の方で説明しておりますので、ご参照ください。


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電子書籍「医療統計入門 〜統計の基礎からt検定、 分散分析(ANOVA)まで〜」(iBooks/Kindle)

2020/06/06

医療統計から考えるアビガンのマーケティング戦略(新型コロナウイルス)(2020/6/6)

2020年6月6日の情報に基づき記事を作成しています。
内容については、最新の情報をご確認上ご判断ください。

photo by NIAID

新型コロナウイルスに対する医薬品の適応拡大


アビガンの臨床試験について、医療統計と医療マーケティングの立場から考察してみたいと思います。今、新型コロナウイルスに対する医薬品として注目されているものは、適応拡大であり、既存治療の中で使われてきたものです。適応拡大とは、他の疾患での治療に使われていた薬を別の疾患に使うことをいいます。

5月7日にレムでシビルが特例承認されるまで、新型コロナウイルスに有効な薬がない状態でした。 ベクルリー(レムデシビル:Remdesivir)はエボラウイルス感染症に対する治療薬として開発された薬剤です。アビガン(ファビピラビル:favilavir)も抗インフルエンザ薬として開発された薬剤です。

未知の副作用が起こる可能性は否定できません。ただし、適応拡大の利点は、ある程度、安全性が似たものになることです。例えば、全く警戒していないところで催奇形性が起こるのではなく、アビガンでは既に催奇形性が知られていることがあります。 (例えば、オブジーボなどの抗癌剤でも、悪性黒色腫から始まり現在9種類のガンに使用されています。腫瘍という共通の土台の上で、経験値が活かせる可能性があります。)

新型コロナウイルスの重症度と治療の選択肢


新型コロナウイルスの治療では、呼吸器を主たる目安として重症度が分類されています。厳密ではないかもしれませんが、ウイルスの増殖による臓器への負担が体調を悪化させる軽症から中等症とサイトカインストームにより免疫が暴走による重症に分けられます。

軽症から中等症の治療を考えるときに、新型コロナウイルスの増殖抑制があります。 レムデシビルもアビガンも体内でRNAの元となる物質(リボ核酸)に似たものとなります。新型コロナウイルスはRNAウイルスでウイルスが増えるためには、RNAをコピーする過程が必要になります。このコピーの際に、これらの物質が材料(リボ核酸)として誤って取り込まれ、新型コロナウイルスのRNAが伸びるのをストップさせます。その結果、増殖を抑止します。これが、レムデシビルとアビガンの作用の仕方です。


武漢ウイルス研究所が新型コロナウイルスに対する培養細胞(Vero E6:アフリカミドリザル腎由来)の実験で効果を検討しています。


違いはベクルリー(レムデシビル)は注射薬ですが、アビガン(ファビピラビル)は飲み薬(経口)です。ベクルリー(レムデシビル)は中等症から重症患者を対象としています。おそらくこの投与経路の違いがレムデシビルとアビガンの開発戦略の違いを生み出しているのだと思います。

アビガンの検証的な臨床試験


原則として、医薬品の有効性は、臨床試験により、統計的な有意差が検証されることが必要です。観察研究は、薬の真の効きや安全性を担保すると言うよりも、医薬品に対する新たな知見を付与することが、その第一義的役割です。観察研究における症例の集積により、医薬品の効果の検証ができるものではありません。

アビガンに関しては、様々な臨床試験が動いています。今回着目するのは、試験実施者が富士フイルム富山化学株式会社の「非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象としたファビピラビルの有効性及び安全性の検討−アダプティブ、単盲検、ランダム化、多施設共同比較試験-(非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象としたファビピラビルの臨床第3相試験)」です。 医薬品としての担保と言う意味では、「ファビピラビルの臨床第3相試験」が適切だと思います。


アビガンの臨床第3相試験の対象者は非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者


試験概要を見ると対象者は非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者です。 医療マーケティングの視点からこのデザインを眺めると、ファーストライン(第一選択薬)を狙う戦略に見えます。治療を大きく軽症、中等症、重症に分けるのであれば、治療初期に使われる方が、患者数(パイ)が大きくなります。

新型コロナウイルスの話ではないですが、例えば、抗癌剤での薬剤選択を見てみます。抗癌剤では、作用の仕組みが同じような薬剤が複数選択できるような状況では、どの薬を使うか、どの順番に使うかが問題になります。最初に使われる薬の方が当然ながら患者数(パイ)が大きく、製薬企業も第一選択薬として使われることを望みます。ただ、医薬品の開発の観点から見ると、既存治療のあるものは、医薬品の誕生とともに第一選択薬になることはあまりありません。最初は少数例でそして徐々に臨床試験や使用実績を積み重ねて、選択の順位(ライン)を上げていく、薬を育てていくことが行われます。
まずは治療薬として採用され、他の可能性のある薬が出てきたときには、併用を順次試していく。レムデシビルでは、この戦略に沿っているように思います。

話は戻って、もし、今後アビガンが承認されることがあれば、治療ではレムデシビルより前に使われることになります。しかも軽症例で使われることになります。既存の治療がないので、第一選択薬を狙うと言うのは、戦略としてあり得るのかもしれません。ここから後は経済とか国家間の取引の話になるのかも知れません。ただ、飲み薬(経口)というのもあるのかもしれませんが、負うべきリスクも大きくなるように思います。

予定試験期間が3月31日~6月30日までなので、解析も合わせて、その後どのような結果になるのか興味のあるところです。今一度、有事だからエビデンスが不十分でも良いとなれば、ウイルスと闘う医療従事者の武器が何なのか分からなくなってしまいます。理論的に治療ができる、きちんとしたエビデンスが欲しいというのが率直な感想になります。また試験の途中はバイアスがかからないように、慎重に見守っていく必要があると思います。

その他、新型コロナウイルスの治療薬として候補に挙がっている医薬品は下記のものがあります。


2020/05/30

新型コロナウイルスの第2波(第3波)について思うこと(2020/5/30)


photo by NIAID


2020年5月30日の情報に基づき記事を作成しています。
内容については、最新の情報をご確認上ご判断ください。

これまでの新型コロナウイルスの対策について思うこと


本稿では、新型コロナウイルスの第二波、第三波の定義が曖昧で今後混乱しそうなので考察します。
2020年5月30日現在、非常事態宣言が解除されています。自粛と3蜜(密閉・密集・密接)の回避で下記のように感染者数は減りました。

Coronavirus Disease (COVID-19) Japan Tracker
(2020/5/30)

ウイルスそのものが感染しやすいのか、飛沫に含まれるウイルス数が少なくても感染するのか、無症状下での感染することが感染力を強く見せているのかなど、感染力が何に起因しているのか、理由がはっきりしなかったのですが、実際感染者が減っているので、対策は有効だったと思います。

新型コロナウイルスの治療について思うこと


2020年5月30日時点で公式に認められた治療薬としては、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)しかありません。(薬物治療に関しては別途投稿する予定です。)しかし、医療機関で症例報告として挙げられているものもかなりの数がありますので、下記をご参照ください。


標準的な治療体系、ワクチンによる予防などには至っていないことが課題として感じています。日本(世界でも)の治療の現状は、例えるなら、ブレーキの効きの緩い車を運転しているようだとも言えます。治療体系が確立していれば、車を止めることができますが、今は(いろいろな)ブレーキ(になりそうなもの、効くものもあるかもしれません)を踏みつつも、自然に車が止まるのを待っているような状況だと言えます。

確かに、自粛により発症者数としてカウントされる人数が減りました。しかし、重症化せずに感染を広げていくタイプの感染が、密かに進行している可能性があります。発症した感染患者を早期に見つけ、隔離・治療できれば、感染症の広がりを抑えることが出来ます。おそらくこれが現状の戦略なのだと思います。突発的にいくつかのいわゆるクラスターが発生と押さえ込みを「再燃・寛解」のような概念で捉えていくことが必要になるのだと思います。

RNAウイルスとしての新型コロナウイルス


コロナウイルスの性質を振り返ってみると、ウイルスは自分の力で増殖出来ず、人に感染し、その細胞を用いて、コロナウイルスのコピーを作り増殖します。コロナウイルスの遺伝子はRNA(人の場合はDNA)であり、RNAはDNAに比べて物質として不安定なので、RNAは誤ったコピーが出来やすくなります。コロナウイルスが少し異なった形でコピーされることを変異といいます。

厳密には違うところがある(※)のですが、同じRNAウイルスと言うことで、インフルエンザウイルスを例にとると、インフルエンザはこの変異が常に起こっていて、マイナーチェンジをくりかえしながら生き延びています。一度、インフルエンザにかかったにも関わらず、同じ人が何度もかかるのは変異したインフルエンザに感染しているからです。

1918年に始まった通称「スペイン風邪」において、下記のサイトに日本での状況が、詳しく分析されています。2018年と1920年に2回のピークがあり、このサイトでも「原因ウイルスが変異し、その結果として死亡率が大幅に増加したものと考えることができる」と考察しています。


※:コロナウイルス:プラス鎖(mRNAとして直接ウイルスになるタンパク質を作る)
 インフルエンザウイルス:マイナス鎖(ウイルス粒子にRNAポリメラーゼを持ちゲノムRNAからmRNAを作る)

新型コロナウイルスの第二波、第三波の定義について


今後、新型コロナウイルスの発生状況を見る際にも、ひそやかに進行していた感染が発症者として現れただけ(再燃)なのか、変異により新型コロナウイルスが新たな形になったのか注意して見ていくことが大事だと言えます。変異という言葉が一人歩きするのも困りますが、その一方で、人数が増えたことを持って、第二波、第三波だと述べるのは状況を見誤ることにつながると思います。

いわゆるスペイン風もそうですが、現在では遺伝子変異を直接的に検査しています。2020年4月27日の国立感染症研究所の発表に、新型コロナウイルスのゲノム分子を疫学調査した結果が掲載されています。これによると、コロナウイルスの変異からは、下記のことが記載されています。
  • 2019年末の中国・武漢を発端とする新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) は 2020 年1月から2月にかけて国内に侵入し、地域的な感染クラスター(集団)を発生(第1波)
  • その後、渡航自粛が始まる3月中旬までに海外 からの帰国者経由(海外旅行者、海外在留邦人)で “第2波” の流入を許し、数週間のうちに全国各地へ 伝播して “渡航歴なし・リンク不明” の患者・無症状病原体保有者が増加したと推測
  • 2020 年 3 月末から4月中旬における日本の状況は、初期の中国経由(第1波)の封じ込めに成功した一方、欧 米経由(第2波)の輸入症例が国内に拡散したものと強く示唆

また、「第3、第 4 の波が来ることは必然」ともあり、今後とも警戒が必要なことが伺えます。世間的に次は「第二波」なのだと思いますが、遺伝子変異としては「第三波」ということになります。

2020/01/27

新型コロナウイルスについて(2020/1/27)

厚生労働省HPに新型コロナウイルス(2019-nCov cases)に関するQ&Aについて情報があります。新型に限らずコロナウイルスの感染経路は、咳、飛沫、接触、(便)のようです。
そもそもコロナウイルスとは、人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスです。
人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られています。

一般的な新型コロナウイルス関連肺炎の対策のポイントは以下のとおりです。(予防のポイント

  • 流水と石鹸による手洗いを頻回に行いましょう。
  • 特に外出した後や咳をした後、口や鼻、目等に触る前には手洗いを徹底しましょう。
  • 咳をする場合には口や鼻をティッシュで覆う等の咳エチケットを守り、周りの人への感染を予防するため、サージカルマスクを着用し、人が多く集まる場所は避けましょう。

感染を予防するためには、基本的な感染予防の実施や不要不急の外出の自粛、「3つの密」を避けること等が重要です。これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていない一方で、一定の条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。集団感染が生じた場の共通点から感染を拡大させるリスクが高い3つの条件が示されています。(2020年6月6日追記)

  • 密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
  • 密集場所(多くの人が密集している)
  • 密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)





photo by NIAID

身の回りの消毒について(2020年6月6日追記修正)



疑い患者を取り扱う上での注意点としては、手洗いなど一般的な衛生対策を心がけてくださいとのことです。手など皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)を、物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効であることが分かっています。

0.1%はノロウイルスで便や吐物が付着した床やおむつ等を消毒するときの濃度です。

エタノール濃度は、原則70~83vol%の範囲内であることが求められます。現状のアルコールの不足に対して、60%台でも使用を認めています。(2020年6月6日追記)


厚生労働省・経済産業省のホームページに、「身の回りを消毒するための方法について」のポスターがありましたので掲載します。(2020年6月6日追記)



「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」は違うものです。
「次亜塩素酸ナトリウム」は、塩素系漂白剤などの主成分として用いられるアルカリ性の物質で、従来から新型コロナウイルスの消毒に使われています。「次亜塩素酸水」は、電気分解などの手法で作られる酸性の液体で、新型コロナウイルスへの有効性については、現在検証中です。(よくあるお問い合わせ(令和2年6月4日版)~ |  製品評価技術基盤機構)(2020年6月6日追記)

新型コロナウイルスの発生状況(1/27時点)


欧州疾病予防管理センターには、新型コロナウイルスの発生状況(1/27時点)があります。武漢以外にも既に周囲の省に伝播しているようです。

地域特定地域確定例死亡数
アメリカアメリカ合衆国50
アメリカカナダ10
アジア中国277581
アジアJapan30
アジア大韓民国40
アジア台湾50
アジアタイ80
アジアシンガポール40
アジアベトナム20
アジアネパール10
アジアマレーシア40
ヨーロッパフランス30
オセアニアオーストラリア50
合計282081

衛生材料の不足について


1月27日時点
マスクは私の行ったどこのドラッグストアも売り切れでした。
スーパーとか調剤薬局の方が置いてありました。
ドラックストアで売り切れている横の調剤薬局にマスクが陳列されていました・・・。
単純にマスクのあるところというとドラックストアが想起されるのだろうけど、ある程度品揃えのあるスーパーは洗剤などのカテゴリーと一緒に売っています。
調剤薬局は盲点だけれども、薬局で咳をする人用とか、調剤薬局の業態として調剤に偏らないあり方をそもそも模索しているようで案外置いているように思います。
また、ドラックストアと調剤薬局は卸のルートが違うこともあります。

6月6日時点
最近はマスクは何とかなってきましたが、まだアルコール消毒液はないようです。
緊急事態宣言は解除されましたが、今後も感染の広がりに注意が必要だと思います。


(関連情報)

2019/07/15

医薬業界の今後を考える2019年(コラム)

医薬品市場の現状


医薬品市場は医師による処方箋が必要な医療用医薬品と、薬局で買える一般用(OTC)医薬品に分類される。前者の市場規模は10兆円であり、後者が8千億円と診療報酬の関わる医療用医薬品の市場規模が圧倒的に大きい。

薬価が極端に高い医療用医薬品が保険で賄われることで、医療費が圧迫されつつある。

新薬の薬価が高くなるのも理由は、医薬品や生産工程の高度化により臨床試験で承認されるための新薬の開発費や投資の回収のために資金が年々高くなっているからだ。この臨床試験では、薬の効きが個々の患者間の誤差に紛れない程度の患者数を集める必要があり、試験を実施するために相応の費用がかかる。

また、一般的な臨床試験にかかる医薬品のほかに、希少疾患用の医薬品がある。医薬品マーケティングの観点からは小さな市場で成功を収めて徐々に疾患の対象を広げていく適応追加という方策が定石である。希少疾患ではそもそも患者数が集められないので、通常の臨床試験が行えない。ただし、薬としてのニーズがあり、開発を進めないといけないという背景からがあるので極少数で臨床試験が行われる。


医薬品市場の展望


逆の発想としては、近年、がん分野で症状ではなく特定の遺伝子の変異に着目した遺伝子検査が保険収載されたことが記憶に新しい。医薬品と臨床試験に参加する被験者の対応を多対多にすることで、臨床試験の効率化が行われている。開発や臨床試験の規模が大きくなると、新薬の承認を得られるのは巨大企業のみとなるだろう。

このような背景のもと、新薬の承認薬価が上振れする状況の一方で、皆保険制度的に破綻を来さないように既存薬の薬価を下げることが行われている。保険償還の仕組みにより、高額な医療費であっても患者負担は安価に提供されている。本来、保険制度は国民の医療へのアクセスが目的である。しかし、新薬とそれ以外の既存薬と概念的に分けられ何らかの政策意図が働くとすると、保険制度が再定義されていくのではないかと私は考えている。

つまり、既存薬の薬価を下げていく一方で、希少疾患やがん、人の命に直結する医療に保険の財源を回していくと、新薬の開発のための臨床試験に関わる医療に保険の財源が使われる。臨床試験と皆保険制度が結びついた世界が1つ。 そしてももう1つが、薬価の下げ切った既存薬である。現状、病院で医療用医薬品が処方する方が、OTC薬を購入するよりも安い。逆ザヤになっている。この逆ざやを解消すれば、医療用医薬品として保険償還される費用をOTC市場に移行させることができる。そうすることで保険医療費の財源をある程度確保できるようになるのではないか。健康保険薬局やスイッチOTCの傾向などもみていると、近いうちのいつかどこかでこの逆ザヤにメスを入れる瞬間が出てくると予想される。


これからの医薬品市場(私見・まとめ)


医療業界はグローバルで巨大な研究開発型の製薬企業とそれ以外の中堅メーカーに分かれるだろう。中堅以下の製薬メーカーのイメージは、上流からの製薬会社がエンドユーザーにかなり近い距離感で地域包括ケアへ取り組んだり、他業種と協業するパターンと下流からの調剤薬局チェーンがジェネリック薬の製造メーカーとなるパターンなどがある。ドラッグストアがプライベートブランドをOEMで作ることもあるだろう。地域ごとの特色があるので全国統一でというのはもしかしたら難しいかもしれないが、今とは全く違った製薬会社の業態も出てくるかもしれない。
(2019年6月)
(関連リンク)
市販薬あるのに病院処方5000億円 医療費膨張の一因