オミクス解析とコンソーシアムの必要性
オミクス(omics)解析とは生体内の特定の機能分子に着目して,網羅的に解析・研究する学問の総称です。遺伝子や蛋白にそれぞれ注目することでゲノミクス(ゲノム解析)、プロテオミクスなどと呼ばれます。
2018年5月30日オミックス解析を利用して新しい治療薬・診断薬の開発をするために製薬会社3社、3アカデミアによりコンソーシアムが結成されました。 対象とする疾患は関節リウマチ、潰瘍性大腸炎などの免疫炎症性難病。
新薬開発のための研究開発費の増大と重複する疾患を各製薬企業で負担していくには限界があります。また患者検体の数も限られており新たな枠組みが必要とされていました。
3アカデミア、3製薬企業の役割
免疫炎症性難病に対する高いレベルの診断・治療・臨床的評価技術は、厚生労働省の「早期・探索的臨床試験拠点(医薬品/ 免疫難病分野)」である慶應義塾大学病院が提供します。 高知大学医学部も臨床検体の収集に共同します。地域に根ざした高知大学が参加は地域差による検体組織の均一化を図るためにも重要です。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、最先端の創薬研究支援体制により均一化された質の高い検体組織から更に細かくクラス分けされた細胞セットごとのオミックス解析が可能となります。
細胞サブセット:組織毎、または血液の場合は分離した細胞の種類毎、治療前と治療後、医師の診断による臨床情報別などの基準で、分類して作成した細胞のセット
構築されたデータベースは、参画アカデミア・製薬企業間で共有されます。製薬企業各社は、このデータベースを活用し、免疫炎症性難病治療薬の創製をめざして独自の創薬研究に取り組む一方、各アカデミアは、研究成果をさらなる基礎・応用研究に役立てるスキームです。
人材育成や今後の広がりについて
コンソーシアムを通じて人材交流がされ若手の育成および免疫炎症性難病医療における診断・治療などの標準化とレベルの向上が図られることも期待されます。
また、今後新たにコンソーシアムへの参 加希望がある場合は、規約に従い運営委員会で随時検討されるということです。
(各社プレスリリースより)
- 名称
免疫炎症性難病創薬コンソーシアム - 研究期間
5年間(2018年度~2022年度) - 目的
免疫炎症性難病を対象とした質の高い臨床データ解析を通じた新しい治療薬・診断薬の開発 - 所在地
東京都新宿区信濃町35(慶應義塾大学信濃町キャンパス) - 対象予定疾患
免疫炎症性難病
(参画機関)
- 慶應義塾大学病院
リウマチ・膠原病内科(医学部リウマチ内科)、
消化器内科(医学部消化器内科) - 高知大学 医学部附属病院免疫難病センター
- 医薬基盤・健康・栄養研究所
トキシコジェノミクスプロジェクト - 小野薬品工業株式会社
ニュースリリース - 田辺三菱製薬株式会社
ニュースリリース
研究開発パイプライン - FTY720イムセラ/ジレニア(フィンゴリモド塩酸塩):スフィンゴシン1リン酸受容体機能的アンタゴニスト(小児・多発性硬化症)
- MT-5547:完全ヒト型抗ヒトNGFモノクローナル抗体製剤(変形性関節症)
- MT-1303:スフィンゴシン1リン酸受容体機能的アンタゴニスト(多発性硬化症)、乾癬、クローン病
- MT-7117:皮膚科用剤等(炎症・自己免疫疾患等)
- MT-2990:炎症・自己免疫疾患等